更年期のホルモン補充療法(MHT)と乳がんリスクについて|高槻市高槻駅の乳腺外科・乳がん検診・乳腺の精密検査|よしかわ乳腺クリニック

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更年期のホルモン補充療法(MHT)と乳がんリスクについて

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2026年6月21日

更年期のホルモン補充療法(MHT)と乳がんリスクについて

こんにちは。院長の吉川です。

今回は、外来で患者様からご質問をいただくことが多い、閉経前後の女性に広く行われているホルモン補充療法(MHT)と乳がんリスクについて、乳腺専門医の立場からお話ししたいと思います。

更年期には、ほてり(ホットフラッシュ)、発汗、不眠、気分の落ち込みなど、さまざまな症状が現れることがあります。

これらの症状に対して有効な治療のひとつが、女性ホルモンを補う「ホルモン補充療法(Menopausal Hormone Therapy:MHT)」です。

一方で、

「ホルモン補充療法を受けると乳がんになりやすいのでは?」

という不安をお持ちの方も少なくありません。

今回は、乳腺専門医の立場から、MHTと乳がんリスクについて現在わかっていることをご説明します。

MHTで乳がんリスクは上がるのでしょうか?

結論から申し上げると、
エストロゲンと黄体ホルモン(プロゲスチン)を併用するMHTでは、乳がん発症リスクが上昇することが知られています1-3)


この点について最も有名な研究が、米国で行われた大規模臨床試験である

Women’s Health Initiative(WHI)試験です1)


WHI試験では、エストロゲンとプロゲスチンを併用した女性の乳がん発症リスクは、治療を受けていない女性と比較して約1.24倍でした1)。さらに20年以上の長期追跡調査でも、リスク上昇が持続することが報告されています2)


ただし、この数字だけを見ると大きなリスクに感じられるかもしれませんが、

実際の発症数で見ると、


MHTを受けていない女性:年間30人/1万人
MHTを受けている女性:年間38人/1万人


でした1)


つまり、


1万人の女性が1年間MHTを受けた場合、乳がんが約8人多く発生する

という結果です。


乳がんリスクが上昇することは事実ですが、その絶対リスクは決して極端に大きいものではありません。

MHTのリスクは薬剤によっても異なります

近年では、MHTによる乳がんリスクはすべて同じではなく、使用する黄体ホルモンの種類によって異なる可能性が指摘されています3)4)

日本乳癌学会の乳癌診療ガイドライン2022年版でも、天然型プロゲステロンやジドロゲステロンでは、従来の合成黄体ホルモンに比べて乳がんリスクが低い可能性が紹介されています3)

そのため現在では、患者さんの症状や背景に応じて、より安全性に配慮した薬剤選択が行われています。

MHTを中止するとリスクはどうなるのでしょうか?

MHTによって上昇した乳がんリスクは、中止後徐々に低下していくことが知られています3)

一方で、中止した直後から完全に未使用者と同じリスクになるわけではなく、中止後もしばらくはリスク上昇が残る可能性が報告されています5)。そのため、MHT治療中はもちろん、治療終了後も定期的な乳がん検診を継続することが大切です。

乳腺専門医としての考え

私は乳腺専門医として、適切な適応がある方へのMHTには賛成です。

更年期症状によって睡眠や仕事、日常生活に支障をきたしている方にとって、MHTは生活の質(QOL)を大きく改善する可能性のある有用な治療です。

一方で、乳がんリスクがわずかながら上昇することも事実です。

大切なのは、

「リスクがあるから絶対に受けない」 のではなく、

「リスクを理解したうえで上手に付き合う」

ことだと考えています。

また、MHTを受けている患者さんは、薬剤の影響で乳腺濃度が上昇する可能性が報告されています6)。乳腺濃度が高い場合は、マンモグラフィだけでなく、乳房超音波検査(エコー検査)も併用して検査を行うことが望ましいと考えられます。

MHTを受けている方、あるいは過去に受けていた方は、定期的な乳がん検診を継続し、万が一乳がんが発生した場合でも早期発見できるよう心がけましょう。

参考文献

1)Rossouw JE, et al. Risks and Benefits of Estrogen Plus Progestin in Healthy Postmenopausal Women: Principal Results From the Women’s Health Initiative Randomized Controlled Trial. JAMA. 2002;288(3):321-333.
10.1001/jama.288.3.321 
2)Chlebowski RT, et al. Association of Menopausal Hormone Therapy With Breast Cancer Incidence and Mortality During Long-term Follow-up of the Women’s Health Initiative Randomized Clinical Trials. JAMA. 2020;324(4):369-380.
10.1001/jama.2020.9482
3)日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン2022年版 疫学・診断編 CQ2「閉経後女性ホルモン補充療法(HRT)は乳癌発症リスクを増加させるか?」
https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/e_index/cq2/ 
4)Fournier A, Berrino F, Clavel-Chapelon F. Unequal risks for breast cancer associated with different hormone replacement therapies: results from the E3N cohort study. Breast Cancer Res Treat. 2008;107:103-111.
10.1007/s10549-007-9523-x
5)Chlebowski RT, et al. Breast Cancer After Use of Estrogen Plus Progestin and Estrogen Alone: Analyses of Data From 2 Women’s Health Initiative Randomized Clinical Trials. JAMA Oncology. 2015;1(3):296-305.
10.1001/jamaoncol.2015.0494
6)Chlebowski RT, et al. Influence of Estrogen Plus Progestin on Breast Cancer and Mammography in Healthy Postmenopausal Women. JAMA. 2003;289:3243-3253.
10.1001/jama.289.24.3243

【記事監修者】

よしかわ乳腺クリニック 院長

吉川 勝広(よしかわ かつひろ)

医学博士、日本乳癌学会認定乳腺専門医、日本超音波医学会認定超音波専門医

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