2026年6月04日
30代の方の乳がん
こんにちは、院長の吉川です。
高槻市では30代女性を対象とした無料の乳がん検診を実施しています。今回は、30代の乳がん(若年乳がん)と、それに対する高槻市の取り組みについて、乳腺専門医の立場からお話ししたいと思います。
「乳がんは40代以降の病気」と思われている方も少なくありません。確かに乳がんは年齢とともに増加しますが、30代で発症する方もおられます。
30代は仕事や子育てで忙しく、ご自身の健康管理が後回しになりがちな年代ですが、その一方で、乳がんは早期発見によって治療成績が大きく改善する病気でもあります。
日本乳癌学会の年次乳癌登録集計によると、30代の乳がん患者さんは年間3,500~4,000人程度と報告されています。30代の乳がんは決して稀ではなく、特に30代後半から増加し始めます。30代で発症する乳がんは、40歳以上で発症する乳がんと比較して進行した状態で見つかることが多く、早期発見が重要とされています。
それにもかかわらず、30代女性を対象とした公費による乳がん検診を実施している自治体は全国的にも多くありません。
なぜ多くの自治体では30代の乳がん検診を行っていないのでしょうか?
多くの自治体の対策型乳がん検診は40歳以上を対象としていますが、その理由の一つに、30代女性に多い高濃度乳房(デンスブレスト)の問題があります。
30代女性では乳腺組織の豊富な高濃度乳房が多く、一般的な乳がん検診で用いられるマンモグラフィでは病変が見つけにくい場合があります。そのため、40歳以上の女性で確立されている検診方法をそのまま30代に適用することが難しく、全国的にも検診制度のあり方について慎重な議論が続いています。
つまり、30代は「乳がんにならない年代」なのではなく、「検診の方法に工夫が必要な年代」なのです。こうした事情から、多くの自治体では30代を対象とした公費検診が行われていません。
高槻市の先進的な試み
そのような中で、高槻市では30代女性を対象とした乳がん検診を無料で実施しています。
乳房超音波検査(エコー)は、高濃度乳房においてマンモグラフィでは見えにくい異常を発見しやすい可能性があり、若い世代の乳房評価に有用であることが期待されています。そのため近年は、高濃度乳房に対するエコー検査の役割に大きな注目が集まっています。
高槻市ではこうした背景を踏まえ、30代女性を対象とした乳がん検診にエコー検査を導入しています。これは国の対策型検診の対象年齢より若い世代にも目を向け、高濃度乳房という若年女性特有の課題に配慮した、全国的にも先進的な取り組みといえるでしょう。
費用は無料で、2年に1回受診することができます。
まとめ
乳がんは30代でも発症することがあります。すなわち、30代は「乳がんにならない年代」ではなく、「検診の方法に工夫が必要な年代」でもあります。
高槻市の30代乳がん検診は、その課題に真正面から向き合い、若い世代の乳房の健康を守るために設けられた貴重な制度です。
対象となる方は、この機会をぜひ活用し、ご自身の健康を守る第一歩として乳がん検診を受診していただきたいと思います。
【記事監修者】
よしかわ乳腺クリニック 院長
吉川 勝広(よしかわ かつひろ)
医学博士、日本乳癌学会認定乳腺専門医、日本超音波医学会認定超音波専門医