乳腺症

乳腺症とは、乳房の中にある乳腺組織に様々な変化が起こり、しこりや痛み、張りなどの症状を引き起こす疾患の総称です。特に30代から50代の女性に多くみられる良性の疾患であり、ホルモンバランスの変動によって乳腺の組織が変化し、様々な症状をきたすと考えられています。乳腺症は「病名」ではなく、乳房にみられる良性の変化をまとめて表した「病態」の名称であり、その内容は多様です。しこりのように触れるものから、痛みだけのもの、マンモグラフィや超音波検査で偶然見つかるものまで様々です。
乳がんとの鑑別が重要になるケースもあるため、自己判断せず、専門の医療機関での検査と診断が推奨されます。当院では、乳腺症の診療・検査も行っており、患者様の不安をできるだけ取り除けるよう丁寧に診察・説明を行っています。

乳腺症の原因

乳腺症の主な原因は、女性ホルモン（エストロゲン・プロゲステロン）の分泌バランスの変動と考えられています。特に生理周期の影響を強く受ける疾患であり、排卵期から月経前にかけて症状が強くなり、月経の開始とともに軽減することが多いのが特徴です。年齢とともにホルモンの分泌量やバランスが変化するため、30〜50代の女性に多くみられる傾向があります。
また、妊娠・出産の経験や閉経前後のホルモン変動、ストレスや生活習慣の影響も乳腺症の発症や症状の増悪に関わっているとされています。特に、カフェインや高脂肪食の過剰摂取、喫煙、過労、睡眠不足などが関係する可能性があり、生活習慣の見直しが症状の改善につながる場合もあります。
一方、乳腺症の症状は乳がんと似ている場合もあるため、症状の原因がホルモン性の良性疾患なのか、あるいは腫瘍によるものなのかを正確に見極めるためには、医師による診察と画像検査が不可欠です。

乳腺症の主な症状

乳腺症の症状は非常に多様で、患者様によって異なります。代表的な症状は以下のとおりです。

乳腺症に関連する主な病気

乳腺症というのは、いくつかの乳腺の良性変化を含んだ総称で、病理学的にはいくつかのタイプに分類されます。また、乳腺症に似た症状を呈する病気もあり、鑑別が必要です。

乳腺症の予防

乳腺症の完全な予防は難しいものの、ホルモンバランスの乱れや生活習慣の影響を最小限にすることで、症状の発症や悪化を防ぐことが期待できます。

1規則正しい生活

十分な睡眠、適度な運動、バランスの良い食生活を心がけましょう。

2ストレスの軽減

ストレスはホルモンバランスに影響するため、趣味やリラクゼーションを取り入れましょう。

3カフェインやアルコールの摂取を控えめに

コーヒー・紅茶・チョコレートなどカフェイン含有食品の摂り過ぎは症状悪化の原因になることがあります。

4禁煙

喫煙はホルモンの代謝や血流に影響するため、禁煙が望ましいです。

5乳房を意識する生活習慣（ブレストアウェアネス）

日頃から「自分の乳房の状態を知る」ことがまずブレスト・アウェアネスの第一歩です。
入浴やシャワーの時、着替えの時、ちょっとした機会に自分の乳房を見て、触って、感じてみましょう。
普段の自分の乳房の状態を知ることで、初めて変化に気が付けます。積極的にしこりを探すという意識は必要ありません。「いつもと変わりがないかな」という気持ちで取り組みましょう。

治療

乳腺症は基本的に良性疾患で、特別な治療を必要としないことも多いですが、症状が強い場合には以下のような対処が行われます。

最後に

乳腺症は女性の多くが経験する良性の乳腺疾患ですが、その症状は乳がんなどの重大な疾患と似ている場合もあります。自己判断だけで「いつものこと」と放置せず、定期的な検査と専門医の診察を受けることが大切です。また、一部の乳腺症は乳がんの発症リスクを上昇させることが知られていますので、乳腺症と診断された場合は注意深くフォローアップをする必要があります。
当院では、乳腺症の診療をはじめ、乳房の症状全般に対する検査・診断・治療を行っております。マンモグラフィや乳腺エコー検査を用いて、しこりや痛みの原因をしっかりと確認し、必要に応じて経過観察や治療、基幹病院との連携も行っています。
「なんとなく気になる」「最近張りが強い」「しこりのようなものがある」「痛みが続いて不安」など、少しでも気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。皆様の安心のために、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけておりますので、ご不安なことは何でもお話しください。