2026年9月15日
はじめに
秋は検診シーズンですね。毎年この時期に乳がん検診を受ける方も多いと思います。
検診を受けると、中には要精密検査、俗に言う「検診に引っかかる」ということを経験される方も少なくありません。
乳がん検診を受け、結果の用紙に「要精密検査」と書かれていると、「乳がんなのではないか」と不安になる方も多いと思います。
しかし、まず知っていただきたいのは、「要精密検査」=「乳がん」という意味ではないということです。
一方で、「きっと大丈夫だろう」と自己判断して、そのままにしてよいという意味でもありません。
今回は、乳がん検診で「要精密検査」と判定された場合に、その結果をどのように考え、その後どのような検査を受けるのかについて解説します。
「要精密検査」とは?
乳がん検診は、乳がんの診断を確定するための検査ではありません。
症状のない多くの方の中から、乳がんの可能性について、もう少し詳しく調べた方がよい方を見つけるための検査です。
マンモグラフィでは、しこり(腫瘤)だけでなく、石灰化、乳腺の左右差など、さまざまな所見を確認します。
その中には明らかに良性と判断できるものもあれば、検診の画像だけでは良性と断定できず、追加の検査で確認した方がよいものもあります。
後者にあたるのが「要精密検査」です。
したがって、要精密検査という判定そのものが、「乳がんの可能性が高い」という意味ではありません。
要精密検査になった人の多くは、乳がんではありません
厚生労働省が公表している令和6年度の統計では、乳がん検診で要精密検査となった方のうち、実際に乳がんが発見された割合は 5.69%でした1)。
およそ18人に1人です。
つまり、要精密検査となった方の多くは、精密検査の結果、乳がんではないことが分かります。
では、なぜ乳がんではない方も「要精密検査」になるのでしょうか。
これは、乳がん検診の役割と関係しています。
検診では、「乳がんであることが明らかなもの」だけを見つけるのではなく、乳がんの可能性を否定できず、もう少し詳しく調べる必要がある所見も拾い上げます。そのため、「検診では精密検査が必要と判定されたものの、最終的には乳がんではなかった」という結果、いわゆる「偽陽性」が一定の割合で生じます。マンモグラフィ検診において、このような偽陽性が一定数生じることは、大規模な研究でも報告されています2)。
ですから、「要精密検査」と言われた段階では、乳がんと診断されたのではなく、まだ診断の途中にいると考えていただくとよいでしょう。
それでも精密検査が必要なのはなぜ?
「多くの人が乳がんではないのなら、症状もないし、受診しなくても大丈夫なのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、先ほどの統計を反対から見ると、要精密検査となった方の中には、実際に乳がんの方も一定の割合で含まれています。
そのため、「必要以上に心配する必要はないけれど、精密検査はきちんと受ける」というのが、要精密検査という結果に対する適切な受け止め方だと思います。
精密検査では何をするのでしょうか?
精密検査の内容は、検診で何を指摘されたのかによって異なります。
代表的なものは、スポット撮影や拡大撮影、トモシンセシスという3Dマンモグラフィなどの追加撮影と、乳房超音波(エコー)検査です。
マンモグラフィの追加撮影
検診で気になる部分があった場合には、その部分をより詳しく観察するため、通常の検診とは異なる方法で追加撮影を行うことがあります。
たとえば石灰化を指摘された場合には、拡大撮影などを行い、その形や分布を詳しく確認します。また、構築の乱れという乳腺のゆがみが疑われた場合は、3Dマンモグラフィなどを用いて、乳腺の重なりなのか、実際に病変が存在するのかを詳しく確認します。
乳房超音波(エコー)検査
超音波検査では、マンモグラフィで指摘された部分に病変があるかを確認し、しこりがあれば、その形や内部の状態などを詳しく観察します。
マンモグラフィと超音波検査は、それぞれ観察を得意とするものが異なります。
そのため精密検査では、検診マンモグラフィで「どこを、なぜ指摘されたのか」を確認し、その所見と超音波画像を照らし合わせて評価することが大切です。
このような追加の画像検査によって、良性と判断できれば、そこで精密検査が終了することもあります。
全員が「針生検」を受けるわけではありません
追加の画像検査を行っても良性と断定できない場合には、病変の一部を針で採取し、顕微鏡で調べる「針生検」が必要になることがあります。
代表的なものには、コア針生検(CNB)や吸引式乳房組織生検(VAB)があります。
ここで大切なのは、要精密検査になった方全員に針生検が必要なわけではないということです。
精密検査の画像で良性と判断できれば、生検を行わずに精密検査が終了することもあります。
一方、画像だけでは良性と断定できない場合には、必要に応じて組織を採取して診断を確定します。
つまり精密検査とは、「乳がんを探すために次々と検査を追加する」というより、検診で見つかった所見の正体を一つずつ確認していく作業と考えていただくと分かりやすいと思います。
「症状がないから大丈夫」とは限りません
乳がん検診は、そもそも症状のない方を対象として行われるものです。
そのため、
「しこりもないし、痛くもないから大丈夫だろう」
という理由で精密検査を受けないことはお勧めできません。
症状が現れる前の段階で乳がんを発見することが、検診を行う目的の一つだからです。
また、精密検査を受けて「心配のない所見だった」と確認することにも意味があります。
検診結果だけを手元に残して心配し続けるのではなく、何を指摘され、それが何であったのかを確認して、一連の検診を終えることが大切です。
必要以上に怖がらず、でもそのままにしない
「要精密検査」という文字を見ると、不安になるのは当然のことだと思います。
しかし、要精密検査は乳がんの診断ではありません。実際には、精密検査を受けた結果、乳がんではなかったという方が大多数です。
一方、その中に一定の割合で乳がんの方が含まれているからこそ、精密検査が勧められています。
ですから、
必要以上に怖がらない。
でも、自己判断でそのままにしない。
この二つが大切です。
検診で「要精密検査」と判定された場合には、乳腺外科など、乳がん検診後の精密検査に対応している医療機関を受診してください。
当院でも、乳がん検診で「要精密検査」と判定された方の精密検査に対応しています。検診結果や、検診施設から画像データを受け取っている場合には、受診時にご持参ください。
参考文献
1) 厚生労働省.令和6年度 地域保健・健康増進事業報告.
2) Nelson HD, et.al. Factors Associated With Rates of False-Positive and False-Negative Results From Digital Mammography Screening: An Analysis of Registry Data. Ann Intern Med. 2016;164(4):226-235.
【記事監修者】
よしかわ乳腺クリニック 院長
吉川 勝広(よしかわ かつひろ)
医学博士、日本乳癌学会認定乳腺専門医、日本超音波医学会認定超音波専門医