2026年3月26日
こんにちは、院長の吉川です。
突然ですが、皆さんコーヒーはお好きですか?
私は香りを楽しむような飲み方はできないのですが、単純に味が好きなので比較的よく飲んでいます。
そのように、毎日の習慣として多くの方に親しまれているコーヒーですが、「乳がんに影響はあるのか?」という疑問は外来でもよく聞かれます。
コーヒーも健康に良い飲み物としてよく知られていますが、実際のところ、乳がんとの関係性はどうなのでしょうか?
今回はコーヒーと乳がんリスクについてのお話をします。
Coffee and tea consumption and risk of pre- and postmenopausal breast cancer in the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition (EPIC) cohort study.
Breast Cancer Res. 2015 Jan 31;17(1):15.
doi: 10.1186/s13058-015-0521-3.
PMID: 25637171
2015年にオランダのグループから報告された論文です。少し古いですが、非常にクオリティの高い論文の一つとして知られています。
33万人の女性を11年にわたって追跡調査し、コーヒー、デカフェコーヒー、紅茶の摂取と乳がんリスクについて検討されています。
条件を細かく分けない全体解析では、コーヒーと乳がん発症リスクとの関連は認められませんでした。一方で、閉経後の女性においては、カフェイン入りのコーヒーを多く摂取したグループで乳がん発症のリスクが10%低下したと報告されています。さらに、閉経後の方については、1日あたりのカフェイン入りコーヒー摂取量が100mL増えるごとに、リスクが1%下がるとも記載されています。
この論文の主張を採用するなら、カフェイン入りのコーヒーは少なくともリスクを増やすことはなく、閉経後の方に限って言えば、リスクを下げてくれるということになります。
しかし、一方でこのような報告もあります。
Coffee intake and breast cancer risk in the NIH-AARP diet and health study cohort. Int J Cancer. 2012 Jul 15;131(2):452-60.
doi: 10.1002/ijc.26372.
PMID: 22020403
この研究は、米国で実施され22万人の女性が参加した大規模な研究です。この論文でも閉経の有無や、カフェイン入りかデカフェかなど、細かくグループを分けて検討されていますが、どのグループでもコーヒーと乳がんリスクとの間に関連性はなかったと報告しています。すなわち、コーヒーは乳がんのリスク因子でも予防因子でもない可能性が高く、少なくとも発がんにおいて重要な役割は担っていないと結論づけられています。
つまり、非常にクオリティの高い研究の中でも、それぞれの研究によって「わずかにリスクが下がる」という結果と、「全く関係がない」という結果が混在しているのが現状です。この違いの理由としては、生活習慣(飲酒や運動など)の影響や、コーヒーの種類・飲み方の違いなどが関係していると考えられています。いずれにしても、効果があるとしても非常に小さく、明確な因果関係は証明されていません。
少なくともリスク因子ではないということは非常に重要なポイントで、世の中のコーヒー愛好家がホッとする結果かと思います。
したがって、「コーヒーは安心して飲んでよいが、乳がん予防のために無理に増やす必要はない」、「好きなら心置きなく楽しんでOK(胃が荒れるなどの他の健康への影響があるので、常識の範疇での限度はありますが)」と、いうのが私の個人的な意見です。
乳がん予防で重要なのは、適正体重の維持、適度な運動、アルコール摂取の制限、そして定期的な検診といった、確かなエビデンスに基づいた対策です。コーヒーについては、過度に心配する必要はなく、日々の一杯を安心して楽しんでいただいて問題ありません。