乳腺炎
乳腺炎
乳腺炎とは、乳房の内部にある乳腺組織が炎症を起こした状態を指します。主に授乳期の女性に多くみられる疾患ですが、授乳をしていない女性にも発症することがあります。授乳中の乳腺炎は、乳腺の中に母乳がうっ滞することにより炎症が起こり、発赤、痛み、腫れ、発熱などの症状を引き起こします。特に乳児への授乳が始まる産後数週間から数か月の間に発症しやすく、母乳育児を行う方の大きな悩みのひとつとなっています。乳腺炎は適切な治療を受ければ比較的短期間で治癒しますが、放置するとうっ滞した母乳に細菌が感染し乳腺膿瘍と呼ばれる膿のたまった病態に進行することがあるため、早期の診断と治療が重要です。当院では、乳腺炎の診断・治療を丁寧に行い、患者様の症状や不安に寄り添ったケアを提供しています。
乳腺炎は、大きく以下の2つの原因に分類されます。
授乳中に母乳の排出がうまく行われず、乳管の中に母乳が滞ることで乳腺が詰まり、炎症を起こすタイプです。授乳間隔が空きすぎたり、赤ちゃんの吸い方が浅かったり、乳管が細く詰まりやすい場合に発生しやすくなります。乳房の一部に硬くしこりのような部分ができ、赤く腫れて熱感を持ち、痛みを伴います。この段階で適切に対処すれば、比較的早期に改善が期待できます。
乳頭の亀裂や傷などから皮膚常在菌(黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌)が乳管内に侵入し、感染を起こして炎症が進むタイプです。発熱や強い痛み、膿の貯留を伴うことが多く、抗菌薬の投与や、場合によっては切開をして膿の排出をする必要があります。授乳中に乳頭が傷つきやすい状況で発症しやすく、乳腺炎全体の中でも重症化しやすいタイプです。こちらのタイプは、授乳中以外でも、強いストレスや過労、ホルモンバランスの乱れ、喫煙習慣などがきっかけとなり、乳腺炎を発症することがあります。
乳腺炎の症状は発症の程度やタイプによって異なりますが、以下のようなものが典型的です。
乳房の一部がズキズキと痛み、授乳時や触れただけでも激しい痛みを感じることがあります。
炎症部位が赤く腫れ、熱感を持つことが多く、乳房の表面に硬いしこりのような塊を触れることもあります。
症状が酷くなると、38℃以上の高熱や悪寒、全身倦怠感が現れます。風邪と似た症状で始まることもあります。
乳腺内に詰まった母乳や炎症反応による硬結ができ、押すと痛みが増強することもあります。
これらの症状が進行すると、膿がたまり乳腺膿瘍となり、さらに重症化する場合もあります。早期発見・早期治療が重要です。
乳腺炎は授乳期に多くみられる乳腺の炎症ですが、似た症状を呈する病気や、乳腺炎から進行する病態も存在します。以下の疾患は乳腺炎と関連が深く、適切な診断と鑑別が必要です。
乳腺炎が悪化し、乳腺内に膿がたまった状態です。しこり部分が赤く腫れ、強い痛みと高熱を伴い、しこりの中心がやわらかく膿瘍を形成します。抗菌薬治療に加え、切開や注射などの膿を排出する処置が必要になることもあります。
母乳が乳腺内に過剰にたまってしまうことでできる、腫瘤状のしこりです。多くの場合は無症状ですが、皮膚に近いところに出来ると自分でしこりを自覚することもあります。授乳や搾乳によって改善することが多いですが、放置すると乳腺炎に発展することもあります。
乳管が拡張し、分泌物がたまりやすくなる病気です。乳腺炎の原因となることもあり、繰り返し乳腺炎を起こす方では、この疾患の存在を考慮する必要があります。乳頭分泌物やしこり、違和感を伴うこともあります。
乳腺炎と似た症状を呈することがあり、特に授乳期以外で乳房のしこりや腫れ、発赤、分泌物などがみられる場合は注意が必要です。乳腺炎の治療で改善しない場合、乳がんの可能性も考え、適切な検査による鑑別が重要です。
乳腺炎は、授乳期の女性で適切なケアを行うことで多くを予防できます。以下のポイントを心がけましょう。
母乳が乳腺内にたまらないよう、赤ちゃんにしっかりと授乳を行い、授乳間隔が空くときや、赤ちゃんの吸いが少ない時は搾乳で母乳を出す習慣をつけましょう。
乳房全体からバランスよく母乳が出るよう、授乳姿勢を工夫しましょう。片側ばかりにならず、左右交互に授乳を行うことがおすすめです。
細菌の侵入を防ぐために、授乳前後は乳頭を清潔に保ち、亀裂や傷ができないよう保湿剤などでケアしましょう。
過労や睡眠不足は乳腺炎のリスクになるため、育児中でも適度な休息を心がけましょう。
母乳が詰まりやすくなるといわれており、過剰摂取は控えるようにしましょう。
乳房全体をやさしくマッサージし、母乳の流れを良くすることで詰まりを防ぐことができます。
乳腺炎の治療は、症状の進行度と原因によって異なります。
授乳や搾乳によって滞った母乳を排出することにより、しこりや硬結を軽減させることができます。痛みが強い場合は温罨法(温める)や鎮痛剤も併用します。
助産師や医師による乳房マッサージで詰まった部分をほぐします。
授乳姿勢や頻度の指導、乳頭ケアの方法などを伝え、再発予防を行う。
感染症が疑われる場合、適切な抗菌薬(セフェム系・ペニシリン系など)を投与します。
発熱・痛みが強い場合は消炎鎮痛剤を併用します。
乳腺膿瘍となった場合は、穿刺による排膿、もしくは局所麻酔下で切開排膿を行います。
可能であれば授乳は継続し、詰まった乳腺の排出を促します。感染のある場合も、乳児への影響は少ないとされています。
乳腺炎は授乳中の女性にとって非常につらい疾患ですが、早めに適切な対処を行えば短期間で改善することが可能です。特に授乳期の育児ストレスや疲労が重なると発症しやすいため、無理せず専門医を受診し、助産師や看護師のサポートを受けながら適切なケアを行うことが大切です。
当院では、乳腺炎の診療はもちろん、乳房のしこりや痛み、発熱などの症状にも対応しております。乳腺専門の検査機器を備え、必要に応じて超音波検査や採血も行い、迅速に原因を突き止めて治療にあたります。
「授乳中にしこりができた」「乳房が赤く腫れて痛い」「高熱が出た」など、少しでも気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。早めの対処が、ご自身の体と赤ちゃんの健康を守る第一歩です。
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